無縁仏になる前にできる墓じまいと弔いの変化
- 2019/05/03
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無縁仏になる前にできる墓じまいと弔いの変化
目次
墓じまいに至る理由とは?
墓じまいとは、お墓に安置されたご遺骨を取出し、墓石を解体・撤去して更地に戻した後、寺院や霊園に返還する行いのことで、文字のごとく「墓をしまう」ことを意味しています。
従来は代々受け継いでいくのが当たり前と考えられていたお墓ですが、近年では「墓じまい」という方法を選ぶご家族が増えており、新聞やテレビなどのメディアで墓じまいに関する話題が取り上げられることも多くなりました。
墓じまいに至る理由にはどのようなことがあるのでしょうか。
墓じまいを選択する方が増えている背景には、少子高齢化や地方の過疎化が深刻な現代の人口減少社会とライフスタイルの変化が原因の根底にあると言えるでしょう。
お墓参りを習慣としてきた世代の高齢化が進み、定期的なお参りやお墓掃除など墓守の役目を果たすことが体力的にも難しくなってきたという場合も多く、少子化によってお墓の承継者がいないというケースも増えているため、維持管理ができなくなる前に墓じまいをしておこうとお考えになる方が増えているようです。
お墓参りや管理を続けることの負担、承継者の不在、金銭的な負担など事情はさまざまにありますが、人口減少の動向にある少子化・多死社会の現代において、墓じまいの増加は必然的な流れなのかもしれません。
墓じまいする方法
将来的なことを考えて墓じまいをするという選択は、ご先祖様を粗末に扱わない、放置して無縁仏にしない、そして、お墓を無縁墓にしないための立派な決断です。
しかし、墓じまいはお墓を解体して撤去するだけの行いではありません。
墓じまいを決める前に、家族や親族の承諾を得ることはもちろん、お墓を管理していただいた寺院や霊園に撤去の申し出を行った後、書類上での手続きをする必要があります。
また、埋葬された遺骨を他の墓地や納骨堂へ移す「改葬(かいそう)」を行う場合には、新旧の墓地管理者と手続きを行うために「改葬許可証」などの書類が必要となりますので、市区町村役場で交付手続きを行いましょう。
お墓の引っ越し「改葬」に必要な手続きや書類について詳しくはこちらをご覧ください。
お墓の承継者がいないという場合には、改葬という方法ではなく永代供養や手元供養、海洋散骨や樹木葬といった方法で亡き人やご先祖様を弔うこともできます。
墓じまいの流れと必要な手続き
墓じまいを行う際には、「墓地埋葬法」で定められた所定の手続きが必要となります。
①お墓の閉眼供養
閉眼供養とは、「墓石に宿る仏様の魂を抜き取る」という意味を持つ儀式のことで、文字通り仏像の目を閉じて、墓石をただの石に変えるという意味合いを持つ法要です。
宗派や地域によっては、「御魂抜き」や「お性根抜き」と呼ばれることもあります。
ご遺骨を取り出す前に、僧侶を招いてお墓の前で読経してもらい、集まった者で焼香を行うのが一般的です。
墓じまいの流れの中でも、最も疎かにしてはいけない作業と言えるでしょう。
②遺骨の取出し
お墓の中に納めていた遺骨を取り出します。
長い間お墓の中に安置されていた遺骨は、湿気を含んで溶解していたり、カビが生えているなど不衛生な状態の場合が多くありますので、新しい骨壺に入れ替えるなどのお手入れを行う必要があります。
墓じまいをした後の遺骨の供養方法によって遺骨のメンテナンス方法も異なりますので、洗骨などは専門に行う業者などに依頼するとよいでしょう。
遺骨の供養方法 | 遺骨のメンテナンス方法 |
---|---|
永代供養で合祀する場合 | 骨壷内の水を抜き、遺骨を洗浄する。 |
散骨する場合 | 骨壺から遺骨を取り出し、湿気を取り除いた後に乾燥してから粉骨する。 |
納骨堂・樹木葬の場合 | 遺骨を洗浄、殺菌、乾燥し、骨壷を新しくする。 |
手元供養する場合 | 骨壺の水を抜き、洗骨、乾燥、殺菌の後、真空パックまたは粉骨する。 |
ご先祖様のご遺骨が土葬や未火葬だった場合には「再火葬」が必要です。
再火葬する際には、あらかじめ市役所に再火葬の申請を行っておきましょう。
③墓石の解体と撤去
墓石の解体、お墓周辺の供養塔やカロート、外柵など使用している墓所のすべてを撤去して更地の状態に戻し、管理していただいた寺院や霊園へ土地の返還とともに永代使用権を返納します。
解体や撤去作業は、事前に依頼しておいた石材店や墓石屋など専門業者にお任せしましょう。
墓じまいは無縁仏にしないための立派な供養
生活スタイルの変化に伴い、お墓に対する意識や価値観もひと昔前に比べるとずいぶん様変わりしました。
地方から都市部へと移り住む人が増え、核家族化や少子化が進む地域では住民の高齢化とともにお墓の維持も年々難しくなっており、お墓を守って管理する人の減少によって無縁仏となるお墓が増加傾向にあるといいます。
また、実家を離れて暮らす世代にとってもお墓参りに通うための費用を負担に感じていたり、いつか訪れる親の死後にお墓をどのように維持管理すれば良いのかと不安を抱えている方も少なくありません。
「お墓をどうするか」という問題は、年齢問わず多くの方が直面する身近なことであり、必然的に「墓じまい」について考えざるを得ない時代がやってきていると言っても過言ではないでしょう。
とは言え、近い未来に何らかの事情でお墓の管理ができなくなるとわかっているのであれば、何も対策を取らないでいるよりも、お墓の最後を看取る方が責任を持って墓じまいを行いご先祖様や故人を供養することで、立派な弔いができるのではないでしょうか。
墓じまいは決してネガティブなことではなく、ご先祖様や亡くなった方に対して礼儀を欠く事柄でもありません。
守る人がいないまま放置されたお墓は荒れ放題となり、周りのお墓や寺院、霊園などに迷惑をかけてしまうだけでなく、いずれは無縁墓(無縁仏)となり他人の手で撤去されてしまいます。
何も対処しないでいることは、結果としてお墓に眠る大切な方やご先祖様をぞんざいに扱うことになってしまうということです。
もちろん、墓じまいを決断するまでは、親族縁者各々が納得できるまで話し合う時間が必要です。
そして、実際に墓じまいをすると決まった後も、寺院や霊園との打ち合わせや手続きなどの準備に時間や労力を費やしますし、まとまった費用も必要となります。
それでもお墓の在り方をあらためて検討し、無縁墓(無縁仏)になってしまう前に遺骨を然るべき方法で供養して自分の代で墓じまいをするということは、未来を見据えた前向きな選択と言えるのではないでしょうか。
生前整理に必須のパソコン用アプリデジタルエンディングノート「編みノート」を活用して、自分の死後に希望する「供養の方法」や「墓じまい」のことなどを大切な家族に伝える準備をしておきましょう。