遺族年金は1人1年金が原則!受給要件や支給期日を確認しましょう
- 2017/11/16
- お役立ち情報
遺族年金は残された家族の暮らしを支えるための年金制度です。
遺族年金(いぞくねんきん)とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者、あるいは被保険者であった方が亡くなったときに、残された遺族に対して支給される日本の公的年金です。
この遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類が運営されており、亡くなられた方の年金の納付状況などにより、いずれかまたは両方の年金が支給されます。
これらの遺族年金を受け取るためには、規定の手続きを行う必要があります。
そのためにはまず、亡くなった方が「どの年金に加入・受給していたか」、「遺族年金を受けられる遺族は誰なのか」を把握し、遺族に該当した場合には「遺族年金をいくらもらえるのか」ということを確認しましょう。
残された家族にとって生活費を確保するための大切な保障であり、ほとんどの方が受けられる保障ですが、受けられない方もいますので、受給条件は必ず確認しておかなければなりません。
◆遺族年金の種類◆
遺族年金は大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類です。
どの遺族年金を受け取ることができるかは、亡くなった方の職業や年金の納付状況などによって異なりますが、基本的に自営業の方は「遺族基礎年金」、会社員の方は「遺族基礎年金と遺族厚生年金」の両方が対象となります。
◆受給するための前提となる要件◆
亡くなった方が加入・受給されていた年金によって、遺族年金(一時金を含む)を受け取ることができる遺族の範囲は異なります。
また、遺族年金は「養ってくれていた大黒柱が亡くなって残された家族が路頭に迷わないようにするため」のお金でもあるので、受給できる遺族の範囲は亡くなった方に生計を維持されていたことが前提となります。
◆「生計を維持されていた」とは◆
「生計を維持されていた」とは、死亡当時、亡くなった方と生計を同一にしていた方で、年収850万円を将来にわたって得られない方のことをいいます。
ただし、死亡当時に年収が850万円以上であっても、おおむね5年以内に年収が850万円未満になると認められる方は、遺族年金の対象者になります。
亡くなった方の収入に全く頼らず生活をしていた場合は、生計維持関係にあったとは認められません。
◆年金額と受給期間◆
遺族基礎年金・遺族厚生年金の額は、物価や賃金などの変動に応じて毎年見直しが行われるため、変更になる場合があります。
また、一度決定したら年金はずっともらえるというわけではなく、支給停止や受給資格を喪失する要件があります。
1人1年金が原則!年金の選択と併給について
公的年金制度には「老齢・障害・遺族」の3種類があり、同一人物が2種類以上の年金を受ける権利を持つことがあります。
しかし、年金には1人1年金という原則がありますので、複数の年金を受給する権利があったとしても、基本的には1種類の年金しか受給できません。
1人1年金とは、1人に複数の年金を受け取る権利があったとしても、その中から1つの年金だけしか受け取れないということです。
この原則に基づき、国民年金・厚生年金保険・共済組合などから、支給事由が異なる年金を2つ以上受けられるようになった場合にいずれか1つの年金を選択して受け取ることになります。
これは、「老齢・障害・死亡の事由から生じる遺族の所得減少を支援する」という意味合いがある年金制度において、遺族の複数の年金受給によるもらいすぎを防ぐためです。
法律上ではこれを併給調整といいます。
そのため、遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金は1つとみなされます)を受け取っているときに、他の年金を受け取ることができるという場合には、どちらかの年金を選んで受け取ることになります。
ただし、併給調整の特例によって2つ以上(複数)の年金が受け取れる場合があります。
年金の選択と併給について、代表的な事例を確認しておきましょう。
◆年金を選択しなければならない代表的なケース◆
- 遺族基礎(厚生)年金と障害厚生年金の場合、いずれか1つの年金を選択。
- 遺族基礎(厚生)と旧厚生年金の遺族年金の場合、いずれか1つの年金を選択。
- 遺族基礎(厚生)年金(65歳前)と特別支給の老齢厚生年金(※①)の場合、いずれか1つの年金を選択。(※②)
※①)特別支給の老齢厚生年金とは・・・老齢厚生年金には、65歳から終身受け取れる本来の老齢厚生年金と、60歳から64歳まで受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」の大きく分けて2つの種類があります。期間限定のため受け取れる人と受け取れない人がいます。
※②)今まで遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けていた方が、60歳になって特別支給の老齢厚生年金などを受けられるようになった場合、遺族給付と老齢給付をあわせて受けることはできませんので、いずれかを選択することになります。
◆2つ以上の年金を受け取れる特例の代表的なケース◆
※65歳以上の受給権者に限ります
- 遺族厚生年金と老齢基礎年金(ただし、「遺族基礎」年金と「老齢基礎」年金の場合は選択)
- 遺族厚生年金と障害基礎年金(ただし、「遺族基礎」年金と「障害基礎」年金の場合は選択)
- 遺族厚生年金と老齢厚生年金(ただし、「遺族厚生」年金の額と「老齢厚生」年金の額との差額を遺族厚生年金として支給)
なお、併給調整の特例によって2つの年金を受ける権利ができた場合には、年金受給選択申出書の提出が必要になります。
年金受給選択申出書の提出先は、お近くの年金事務所、または街角の年金相談センターになります。
日本年金機構と共済組合などから年金を受けている場合には、共済年金の年金額が確認できる書類(改定通知書など)が必要になります。
年金受給選択申出書の提出は、現在受けている年金を選択し、そのまま受け続けるという場合でも必要になりますので、忘れないよう注意しましょう。
年金の選択を変更したい場合、選択替えをすることができます。
原則として、2つ以上の年金の受給権が生じた場合は、年金受給者が選択するいずれか1つの年金が支給され、選択しなかったほかの年金については支給を停止されることになります。
ただし、選択しなかった他の年金は、支給停止となるだけで、受け取る権利自体は残っています。
もし、選択した一方の年金の権利を失ったり、支給が停止されるような場合、また、支給停止中の年金が選択して受け取っている年金より高額になった場合などは、新たに年金の選択替えをすることにより、支給停止を解除することができます。
遺族年金が支給停止される要件は遺族基礎年金と遺族厚生年金で違います。
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は、既定の要件に該当している場合、遺族への支給が停止されます。
支給停止は、失権(受給権の消滅)ではありませんので、その状態が改善されると支給再開されます。
ただし、自ら申請をしなければ支給再開されませんので、早めに手続きを行いましょう。
◆遺族基礎年金の支給停止要件◆
次の場合、遺族基礎年金は支給停止となります。
- 被保険者または被保険者であった者の死亡について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは、死亡日から6年間、遺族基礎年金が支給停止されます。
- 遺族基礎年金の受給権者の所在が1年以上明らかでないときは、妻が受給権者の場合は子が、子が受給権者のときは他の子が申請することによりその支給が停止されます。この場合、前者の場合は子に、後者の場合は他の子に支給されます。
- 夫や妻が受給権を取得したとき、子はその間支給が停止されます。
- 子が受給権を取得したときに、生計を同じくする父または母がいるときは、その間支給が停止されます。
◆遺族基礎年金の支給停止要件◆
次の場合、遺族厚生年金は支給停止となります。
- 労働基準法の規定による遺族補償を受けられるときは、死亡日から6年間、支給停止されます。
- 夫、父母、祖父母に対する遺族厚生年金は、受給権者が60歳に達するまでの間、支給停止されます。(若年停止)
- 子に対する遺族厚生年金は、妻に受給権がある間、支給停止されます。
- 妻に対する遺族厚生年金は、被保険者であった者の死亡について、妻に受給権がなく、子に受給権があるときは、その間支給を停止されます。
- 夫に対する遺族厚生年金は、子に受給権がある間、支給停止されます。
- 遺族厚生年金の受給権者の所在が1年以上明らかでないときは、他の受給権者の申請により、その所在が明らかでなくなったときにさかのぼって、支給を停止されます。
遺族年金の支給が開始されるのはいつから?
遺族年金は、年金加入者が亡くなった日の翌月から支給されますが、支給申請の手続きをしなければ、遺族年金を支給されることはありません。
年金の支給申請は、亡くなった方の年金受給を停止する年金受給権者死亡届の提出だけではなく、亡くなった方の戸籍謄本や住民票の除票をはじめ、様々な書類を提出する必要があります。
支給申請の手続きが問題なく終了すると、年金証書・年金決定通知書が送付され、年金の初回支給が始まります。
初回の支給は年金証書が送付されてから50日程度です。
遺族年金の定期支給も、老齢年金と同じく、偶数月の15日(土・日・祝のときは、直前の平日)に支給されます。
ただし、初回支給や、さかのぼって過去の支払が発生したときは、奇数月に支払われることもあります。
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