遺産分割協議で相続財産の分け方を決めましょう
- 2017/10/02
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目次
相続財産の分け方は遺言者の意思を尊重する
被相続人は遺言によって自分の意思を相続に反映させることができ、相続が開始した後の遺産分割の方法について指定しておくことができます。(民法908条・遺産分割方法の指定)
被相続人が亡くなったとき法的に有効な遺言が存在していて、相続財産の分け方に関する記載がある場合には亡くなった方の意思を尊重し、遺言の記載内容に従って財産を分割するのが原則です。
家族や生前親しい仲にあった方へ自身の最後の意思を伝えることができ、財産相続をめぐる争い(争族)を避けるためにも、遺言を残すということは最も効果的な方法と言えます。
しかし、遺品整理をしていると故人によって作成された遺言が複数見つかるケースもあります。
故人(被相続人)が生前に何度か遺言の書き直しを行っていた場合に、修正前の遺言を処分していなかったということは珍しいことではありません。
とはいえ、遺言を何通も発見してしまったら相続人や遺族はどの遺言に従って相続手続きを進めればよいのか迷ってしまうことになります。
もし2通以上の遺言を見つけてしまったらどのように対処すればよいのでしょうか。
2通以上の遺言が見つかったら
故人の遺品を整理していく中で2通以上の遺言を発見した場合、それら複数の遺言の効力はどうなるのでしょうか。
遺言については、一度作成した後でも制限なく何度でも書き直すことができますし、遺言の数を制限する法律もありませんので何通でも作成することができます。
ただし、法的に有効な遺言を故意に破棄したり隠蔽すると相続人としての権利を失う(相続欠格)可能性があり、罰則(過料の制裁)が課されることもあるため、遺言の扱いは慎重になる必要があります。
2通以上の遺言が存在した場合には、いくつかのポイントに注意して正しく取り扱いましょう。
遺言に記載された作成日を確認する
法的に有効とみなすことができる様式で作成された遺言には、必ず作成日が記載されています。
作成年月日が正しく記載された有効な遺言が2通以上見つかった場合には、まず最新の日付が記載された遺言の内容を優先して相続手続きを進めるようにしましょう。
遺言を作成した被相続人が亡くなられた日に最も近しい日付が作成日として記載されていれば、その遺言内容が故人の最終の意思と判断することができます。
一番新しく作成された遺言と、それ以前に作成されたとわかる複数の遺言内容に抵触(矛盾)する部分があった場合には、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなします。(民法第1023条1項)
ただし、新しい作成日の遺言があるからといって、古い作成日の遺言が効力を持たないということではありません。
古い遺言でも新しい遺言と抵触しない部分については法的に有効な遺言である限り、どんなに古く、何枚あろうとすべてが有効になるため、正確に相続に反映しなければならない制度であるということを知っておきましょう。
なお、日付の記載がない遺言は無効とななるため、2枚以上の遺言の中で日付が記載されていないものについては一目瞭然で無効と判断することができます。
同じ作成日の遺言が2通以上ある場合
2通以上の遺言に同一の作成日が記載されているケースもあります。
このような場合には、遺言の内容や一切の事情から考慮して時間的な後先を判断することになります。
遺言を読み解いても作成の前後が判断できず、解釈が曖昧な場合には相続人間での協議によって決めることになります。
遺言なしの場合は遺産分割協議で決める
遺言が存在しない場合は、原則として法定相続人となる方全員で話し合う「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」を行い、遺産の分け方を決めることになります。
財産の分割方法については、相続人それぞれの希望に沿って分配しても何ら問題はありませんが、相続税の申告や納税も考慮しなければなりませんので、必要に応じて弁護士や税理士に相談することをおすすめします。
なお、相続放棄をした相続人は遺産分割協議には参加することはできません。
遺産分割協議は、裁判外での話し合いですので相続人全員で行う必要がありますが、必ずしもひとつの場所に集まって行う必要はありません。
相続人の中に遠方に住んでいる方がいる場合は集まるだけでも大変です。
最終的に遺産分割協議の内容に同意し、全員納得の上で「遺産分割協議書」に署名押印することが重要であるため、その過程に決められた方法はありません。
相続人が全員合意して遺産分割協議が整ったら、相続税申告や所有者移転の登記などの相続の手続きをスムーズに進めるため、そして、相続人同士でのトラブルを防止するためにも必ず「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
遺産分割協議書に定まった様式はありませんので手書きやパソコンで作成しても構いませんが、合意の証明として相続人全員の署名と「実印」による押印は必須です。
なお、未成年者や認知症を患っている方、行方不明者なども相続人である以上は遺産分割協議に関与する必要があります。
これらの人についてはそれぞれ、未成年者が相続人の場合は「親権者または特別代理人」、認知症など判断能力を欠く人が相続人の場合は「成年後見人」、行方不明者が相続人の場合は「不在者財産管理人」などが該当する本人の代わりに遺産分割協議に参加します。
共同相続人*のうち1人でも協議に参加していない人がいる場合には、その遺産分割協議は無効となります。
※まだ遺産を分割しておらず、相続財産を共有している状態にある複数の相続人を「共同相続人」と言います。
相続人全員での協議が難しい場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てましょう。
遺産分割調停の申立てについて
「遺産分割調停の申立て」は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「遺産分割調停申立書」とあわせて被相続人1人につき1200円の手数料(収入印紙)、郵便切手、戸籍謄本や住民票、その他登記事項証明書など各種資料を添付して提出します。
遺産分割調停申立書はインターネットでダウンロード可能です。
書式の記入例を参考に正しく作成しましょう。
遺産を分割する4つの方法
遺産分割(分け方)には4つの代表的な方法があります。
遺産分割協議に先立ち、それぞれの留意点とあわせて確認しておきましょう。
1、現物分割
現物分割(げんぶつぶんかつ)は、財産を現物そのままに分配する最もシンプルな分割方法です。
たとえば、「妻は家、長男は株式、次男は自動車を相続する」といったように財産をそのまま相続するという分け方です。
現物分割では各相続人の相続分を1円単位まで均等に分けることが難しく、相続人間の取得格差が大きくなることがあるため、差額分を金銭で支払うなどの方法で代償を付加することもあります。
2、代償分割
代償分割(だいしょうぶんかつ)は、共同相続人のうち一人(または複数人)に相続財産を現物で取得させ、他の共同相続人などに対して現物を取得した者が代償金を支払うことによって清算する分割方法です。
代償金の金額は「法定相続分」に応じて計算されるため、比較的公平に遺産を分割することができます。
ただし、支払う代償金額が多額になる場合、課税対象とみなされ代償金を受け取った相続人に「贈与税」が発生する可能性があるということを知っておきましょう。
3、換価分割
換価分割(かんかぶんかつ)は、分割が難しい土地や建物といった財産を売却(換価)して取得した現金を相続人同士で分ける分割方法です。
現金に換金した財産を分割するということであれば、土地などの財産をそのまま個別に分配する現物分割や、財産評価や価格変動で不満が生まれやすい代償分割よりも相続人間での不公平が生じにくい方法と言えるでしょう。
ただし、換価(売却)の際には手数料などの費用負担が生じること、また現金に換えてしまうため不動産などの資産が失われてしまうというデメリットがあることも念頭に置く必要があります。
4、共有分割
共有分割(きょうゆうぶんかつ)とは、不動産や有価証券といった相続財産を遺産分割協議や法定相続分に応じて相続人間で共有する分割方法です。
たとえば相続人が3人でひとつの不動産を分割する場合、1人の持分を3分の1ずつに分配することでひとつの不動産を共同所有するという方法です。
ただし、共同で所有している財産を将来的に利用したり売却するといった場合、共有する相続人全員の同意を得る必要もありますし、手続きが複雑になってしまう可能性があるということも考慮しておかなければなりません。
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