財産の相続人になるのは誰? 遺産相続には優先順位や範囲が決まっています。
- 2017/09/12
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目次
「相続人」と「法定相続人」の違いとは
相続人(そうぞくにん)とは、亡くなられた方の財産(遺産)を引き継ぐ権利がある方や引き継ぐことになる立場の方のことを言います。
2通りの意味を含んでいるのは、実際に遺産を相続する人のことも「相続人」と呼び、遺産を相続する権利があっても最終的に遺産を相続しない人のことも「相続人」と呼ぶからです。
「相続人になるのは誰なのか」については、法律によって定められています。
そのため、2通りの意味を含んで包括的に呼ばれる「相続人」と区別するために「法定相続人(ほうていそうぞくにん)」という呼び名が存在します。
法定相続人とは、実際に相続するか放棄するかは別として、相続の権利がある方のことを指しています。
なお、相続財産を残して亡くなった方のことは「被相続人(ひそうぞくにん)」と呼びます。
相続が開始された直後に法定相続人が複数名いる場合は、遺産分割協議がされるまでの間だけ法定相続人となる方全員で相続財産を共有することになります。
このようなケースで相続財産を共有する方々のことについては、共同相続人(きょうどうそうぞくにん)と呼びます。
相続はいつからはじまるのか
みなさんは、遺産相続がいつからはじまるが知っていますか?
民法第882条によると「相続は、死亡によって開始する」とされています。
ここでいう「死亡」とは、被相続人がなくなった事実が確認されたということです。
つまり、被相続者の権利能力の終期と同時に相続が開始されるということになります。
では、相続が始まる場所はどこになるのか。
民法第883条では「相続は、被相続人の住所において開始する」とされています。
「被相続人の住所」とは「被相続人が生前に居住していた最後の住所」のことを指しており、その場所のことは「相続開始地」といいます。
通常は住民票上の住所ということになりますが、住民票上とは異なる住所で住んでいてその居住で亡くなった場合や、住所がわからないなどの場合には、亡くなった場所が相続開始地となります。
被相続人が亡くなられてすぐに相続を開始させるのは、財産の権利や義務における帰属主体(権利を持ったり、義務を負ったりする人)がいなくなることで第三者が不安定な地位に置かれてしまう事態を防止するという意味があるからです。
相続人に相続遺産を帰属させることで法制度上での安定性を確保している、ということを表しています。
相続人になる方の優先順位と被相続人との関係性
相続が発生したときに法定相続人になる人と、原則的な相続財産の割合(法定分割)である法定相続人の取り分「法定相続分」は法律で決められています。
法定相続人になるのは、相続が開始された時点において存在している配偶者や子、直系尊属や兄弟姉妹です。
それ以外の方は、たとえ親族であったとしても法的相続人にはなりません。(ただし、遺贈を受けることはできます)
ここでおさえておきたいポイントは、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹の全員が法的相続人になるわけではないという点です。
法定相続人になる方の間にも誰が該当するのかという優先順位がありますので、具体的に被相続人と相続人の関係性とあわせて確認しておきましょう。
配偶者は必ず相続人になる
被相続人に配偶者がいる場合は、順位に関係なく各順位の相続人と共に必ず相続人となります。
第1順位「子」
「子」が故人の場合は孫、「孫」も故人の場合は「ひ孫」という順番で相続人となります。
この「子」には「養子」も含まれ、実子と同じ相続分を有します。
たとえば、妻と子がいる場合に相続人となるのは妻と子であり、劣後する直系尊属や兄弟姉妹が法定相続人になることはありません。
相続分は妻が2分の1、子が2分の1となります。
子が2人以上いる場合には、子の相続分を等分することになります。
第2順位「直系尊属」
子がいない場合は、「直系尊属」が法定相続人となります。
尊属とは、血のつながりがある血族のうちで先祖にあたる人のことです。
その直系にあたる直系尊属というと父母や祖父母、曽祖父母などになり、相続人となるのは最も親等が近い人になります。
この「直系尊属」には養親も含まれ、実親と同じ相続分を有します。
たとえば、妻と直系尊属がいる場合に相続人となるのは妻と直系尊属であり、相続分は妻が3分の2、直系尊属が3分の1となります。
直系尊属が父と母など複数人の場合は、直系尊属の相続分を等分することになります。
第3順位「兄弟姉妹」
子も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人となります。
兄弟姉妹とは、文字通り、兄や弟、姉や妹です。
配偶者がいる場合の相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。
なお、半分だけ血がつながっている兄弟姉妹の相続分は、全部血がつながっている兄弟姉妹の2分の1となります。
相続の欠格事由に当てはまる人は相続権がはく奪されることも
法定相続人に該当する方であったとしても、相続に関係する法律において不正とみなす一定の事由がある方は、相続人から除外される制度があり、この制度が適応された方は相続人としての資格がはく奪されると同時に相続権を失うことになります。
このように相続権を失わせる制度のことを相続欠格(そうぞくけっかく)といい、不正とみなす一定の事由のことを「欠格事由」といいます。(民法891条)
相続の欠格事由 |
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相続欠格とは別に、被相続人に虐待を加えていた者などは、申し立てをすることによって相続人から廃除されることがあります。
相続人が先に死亡しているときの代襲相続
相続が開始した時に、本来相続するべき法定相続人がすでに亡くなっていた場合、その人は法定相続人ではないものとして扱われるのが原則です。
では、その場合、誰がどれくらい相続できるのでしょうか?
ここからは代襲相続がどこまで起こるのか、そしてその相続分はどのくらいあるのかといったことを解説していきます。
まず「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」とは、相続するはずだった方に代わって直系卑属である子が同一順位で相続人となり、相続権を失った方の相続分を承継する制度のことです。
・・・これでは少しわかりづらいですね。
では、財産を有していた故人より先に死亡していた本来の法的相続人を「Aさん」、「Aさん」の子を「Bさん」と仮定してもう一度ご説明します。
代襲相続をわかりやすく解説!法的相続人「Aさん」とその子「Bさん」の場合
代襲相続とは、相続するはずだった本来の法定相続人「Aさん」に代わって直系卑属である子「Bさん」が同一順位で相続人となり、相続権を失ったAさんの相続分を承継する制度のことです。
この代襲相続のシーンにおいて、相続権を失ったAさんのことを被代襲者、代襲相続をするBさんを代襲相続人といいます。
Bさんのように代襲相続人の第1順位となるはずの「子」が、本来の法定相続人Aさんより先に死亡しているという場合には、「Aさんの孫(Bさんの子)」が相続人となり、「Aさんの孫」も故人より先に死亡しているという場合には、「ひ孫(Aさんの孫の子)」へと相続が引き継がれることになります。
このような相続する権利の移り変わりを「再代襲相続」といいます。
兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合
第3順位である兄弟姉妹が先に死亡している場合は、被相続人にとって甥や姪(兄弟姉妹の子)にあたる方が代襲相続することになりますが、AさんとBさんのケースとは異なり「甥や姪の子」が再代襲相続するということはありません。
非摘出子も嫡出子と同等の割合で相続可能
「嫡出子(ちゃくしゅつし)」と「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」という区別概念があるのをご存知でしょうか。
嫡出子とは、法律上の婚姻関係にある男女(夫婦)間において出生した子どものことをいい、非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子どものことをいいます。
ちなみに「養子」とは、実際には夫婦間で出生した子ではありませんが、法律上の血縁関係がある子であり「嫡出子」ということになります。
民法第779条では「嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる」とあり、認知されている場合は相続権があります。
昔は、相続人となる子が嫡出子であるか非嫡出子であるかという事実は財産相続に大きな影響を及ぼしていました。
しかし、非嫡出子に対する差別は憲法違反とみなされることとなり、平成25年の民法の改正によって非嫡出子の法定相続分は「子」として嫡出子と同等の割合になりました。
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